第31章
 真実を追う男

 イスタンブール。
 東洋と西洋の文明が混在するこの巨大な町の郊外では、奇妙なイベントが行なわれて
いた。
「はーい、ワン・ツー、ワン・ツー、そう、いいぞ、その調子。そこで腰を落としてグ
ルッと一回転、ってあー、ダメダメ、全然揃ってない! やり直し!」
 メガホンを片手にそう指示しているのは、この道二十年の振付師。口うるさくダンス
の指導をする彼の後ろでは大勢のスタッフが動き回り、一週間後に行なわれる野外ライ
ブの準備に取り掛かっている。
「そう、本番まであと一週間。気を抜いている暇は無いんだぞ。はい、レッスン再開、
ワン・ツー、ワン・ツー!」
 振付師の指導にも熱が入る。教わる方も頑張って踊っているが、なかなか上手く踊れ
ない。無理もない。ダンスを踊っているのは、正確には『人間』ではないのだから。
「あー、もう、ややこしいわねえ! あの振付師、自分は踊らないからって勝手な事ば
かり言って。こっちはダンス未経験なんだから、そんなに簡単には踊れないわよ!」
「フィア殿、落ち着くでござる。振付師殿はダンスのプロで、拙者達は素人。ならばプ
ロの指導に従うのは当然でござる」
 苛立つフィアを落ち着かせようとする夏。だが、アキが余計な事を言う。
「確かにあの人はダンスのプロです。ですがMSの操縦のプロではありません。MSに
ダンスを踊らせるというこの無茶なイベントに関しては、彼より私達の意見の方が優先
されるべきだと思います。そして個人的には、こんなにも成功する確率が低いイベント
は中止すべきだと思います」
「む……」
 アキの言う事はもっともだ、と夏は思った。しかし口には出さなかった。シャドウ・
セイバーズのリーダー代行として、この仕事を放り出す訳にはいかないのだ。
 ともあれレッスンは続けられた。踊るのはアキのアストレイライブフレームと、夏の
ストライクシャドウ撃影、そしてフィアの操縦する白く塗られた翼付きのジン。前大戦
時にザフトで使われていた戦術航空偵察タイプのジンを特別なルートで入手、武装を全
て取り払い、イベント用の機体にしたのである。
 三機のMSは腕を回したり、足を上げたり、腰を回そうとしてひっくり返ったり、隣
のMSとぶつかったりしながら、それでも懸命に踊ろうとする。だが、
「ダメ、ダメ、ダメ! 全っっっっっ然、ダメ! お前達、それでもプロのMS乗りな
のか? こんなんじゃ本番には間に合わないぞ!」
 振付師の言うとおり、三機のMSのダンスは無様と言うしかなかった。幼稚園児のお
遊戯レベル、いやそれ以下だ。
 一旦、休憩。MSの操縦席から降りてきた三人の顔は、いずれも疲労の色が浮き出て
いた。その色の濃さは、
「はーい、三人とも、お疲れ様。調子は…」
 と出迎えたカテリーナが三人の顔を見て、絶句する程。
「あー…………えーと、何か美味しい物でも食べに行きましょうか? いいお店を見つ
けたんだけど、どう?」
 息子とフィオーレ家の事しか考えていないカテリーナが、三人に気を使っている。実
際、アキ達の表情はとても暗く、今にも倒れそうだった。
「甘く考えていました。MSにダンスを踊らせる事が、これ程大変だったとは……」
「た、確かにそうでござるな。戦闘の方がまだ楽でござるよ」
「あんた達のMSはまだいいわよ。私のMSなんて旧式のジンよ。動きは鈍いし、反応
は遅いし……あー、もう、イライラする! カテリーナさん、ユナのダンス用OSはま
だ出来ないんですか?」
「え、ええ、まだみたいね。あの子も苦労しているみたいよ。MSにダンスを踊らせる
なんて誰も考えなかったからデータが無くて、一から作らないといけないから」
「ライブまで、あと一週間でござる。間に合うでござろうか?」
「間に合わなかったら、私達がマニュアルで操縦するしかありません。あの無様で醜い
ダンスを踊るしか」
「それだけは絶対に嫌よ。私がサーペントテールからシャドウ・セイバーズに移籍した
のは、恥をかく為じゃないんだから」
 そう強く言うフィアだったが、体の方の疲れは隠せなかった。『スナイパー殺し』と
言われる一流の傭兵である彼女にとって、今回の仕事は最大級に厄介なものだった。
「戦え! とか、敵を殺せ! って仕事だったら自信はあるわ。けど、MSでダンスを
踊ってほしいなんて、あの元気が有り余っているオヤジは何を考えて…」
「そう言わないでくれ。こっちは君達に期待しているんだからな」
 グチをこぼすフィアの前に、この仕事の依頼主が突然現れた。陽気に語りかける彼の
隣には、移動喫茶・風花屋二号店の女店主、松本茜がお盆を持って立っていた。
「みんなー、お疲れ様ー。いつもニコニコ笑顔で商売、世界を駆け巡る風花屋からの差
し入れやでー」
 茜が持つお盆の上には、美味しそうなクリームあんみつが乗っていた。それを見た夏
達の眼に輝きが戻る。
「そやそや、疲れた時には甘いもんが一番や。お代は取らへんから、遠慮せず…」
 と茜が言い終わる前に、三人はクリームあんみつに食らいついていた。その食べっぷ
りは凄まじく、茜の自信作であるあんみつは、あっという間に無くなってしまった。
「え、遠慮せずにとは言うたけど、そんな一気に食べなくても……。もうちょっと味わ
って食べてほしかったなあ……」
 料理人として複雑な気持ちになる茜。落ち込んだ彼女に代わって、今回の仕事の依頼
主が話をする。
「話は振付師の先生から聞いたよ。調子はあまり良くないみたいだな」
「はあ……。申し訳ござらぬ。拙者らが至らぬばかりに、佐々山殿のライブが…」
「いやいや、気にするなよ、夏ちゃん。本番までまだあと一週間ある。それまでに仕上
げればいいんだよ」
 佐々山一郎はそう言って、明るい笑顔を見せた。還暦を過ぎた老人とは思えない、生
命力に満ちた笑顔だった。この笑顔を見ると、体の中から力が沸いてくる気がする。
「佐々山殿、気遣ってくださり、かたじけないでござる。確かに困難な仕事ではござる
が、拙者達にも意地があるし、恩義に応えたい気持ちがある。シャドウ・セイバーズの
名付け親である佐々山殿のライブ、必ず成功させてみせるでござる」
 義理堅い夏は、恩人である佐々山にそう約束した。佐々山には二年前の戦いの後、影
太郎の捜索などに協力してもらったり、危険地帯でのコンサートの警備の仕事を回して
もらうなど世話になっている。今回の仕事は、その恩に報いる為のものだ。
 夏のそういう気持ちはフィアも理解しているし、アキも承知した。しかし、それでも
この仕事が厄介なものだった。フィアとアキは、MSをバックダンサーにする案を思い
付いた佐々山と、この仕事を受けた夏を少し恨み始めていた。



「そうですか? 佐々山さんのアイデア、私は面白いと思いますけど」
 夜、アークロイヤルに戻って、今回の仕事のグチをこぼしたフィアに、ユナはそう答
えた。OSを組み上げる為、パソコンのモニターから眼を離さず、キーを叩く指を止め
ず、ユナは話を続ける。
「佐々山さんも言ってたじゃないですか。『MSは人間の形をした機械だ。つまり、人
間と同じくらい色々な事が出来るし、人間と同じくらい未知の可能性を秘めている。そ
れをわずかでも引き出せたら、凄く面白いじゃないか』って」
 佐々山の言うとおり、MSは人型である事を最大限に活かし、先の大戦では主力兵器
として大活躍した。それは今後も続くだろう。だが、佐々山はMSの可能性を『兵器』
だけに求めなかった。
「私も佐々山さんと同じ考えです。MSは人間と同じくらい、色々な事が出来る。うう
ん、人間よりも大きくて力がある分、もしかしたら人間より凄くて面白い事が出来るか
もしれない。私はMSの可能性を追求してみたいんです」
 そう答えるユナの眼には、小さいが強い光が宿っていた。佐々山の考えは、ユナのエ
ンジニアの魂に火を点けたようだ。
「MSにダンスを踊らせる。つまり兵器にダンスを踊らせるなんて、凄い発想です。こ
んな面白い事、なかなか思い付きませんよ。そしてこれは、人間の形をしたMSにしか
出来ない事です。MSというメカの可能性を広げる、大いなる第一歩になるかもしれま
せんよ」
 ユナの眼の輝きが、ますます増している。キーを叩く指のスピードも、更に速くなっ
ている。
「ダンス用のOSは必ず完成させます。でもOSは動きをフォローするだけで、最終的
に踊れるかどうかは皆さんの腕次第です。フィアさんも頑張ってください」
「……はあ。やるしかないのね。せめて使い慣れているバスターダガーなら…」
「バスターダガーは機体の構造的にダンスには向いてません。あ、でも、あの構造をあ
あすれば…」
「ちょっと、勘弁して。ダンスだけでも精一杯なんだから、これ以上面白い事をやらせ
ないで」
 と申し出るフィアだったが、ユナの眼の光は消えなかった。
「ふふ、ふふふふ。そうだわ、あれをこうすれば……。ふふふふふ」
「ユナ、ちょっと壊れてない? ああ、サーペントテールに戻りたくなったわ。でも、
それをやったらプロとして失格よね。うう……」
 テンションが上がり過ぎておかしくなりかけているユナと、テンションは低いが一度
請けた仕事はやるつもりのフィア。二人の女の悲喜と共に、夜は暮れていく。



 深夜、ライブ会場となる広場の片隅で、熱心に踊っている二人の女性がいた。
「夏さん、そこ違います。そのシーンは右から回るんです」
「む、そうでござった。ううむ、ダンスとは剣術より難しいでござるな」
「そうですね。私達にとっては未知の分野ですし」
「だが、投げ出すわけにはいかないでござる。アキ殿には迷惑をかけてしまうでござる
が……」
「迷惑だなんて思っていません。私達は仲間です。だから夏さんの恩人は、私にとって
も恩人。恩を受けたら返すのが礼儀です。でも、やはりこのイベントが成功する確率は
低いと思います。ユナさんのOSが間に合ったとしても、私達の操縦技術が向上しなけ
れば話になりません。そして期限までに向上する可能性は、極めて低い。フィアさんは
やる気に欠けているし、私も…」
「いや、拙者はそうは思わぬでござる。アキ殿もフィア殿も頑張っているし、ユナ殿は
拙者達以上に張り切っている。諦めず努力し続ければ、必ず成功するでござるよ」
 楽観的な考えだとアキは思ったが、口には出さなかった。言っても無駄だからだ。宮
城夏はこういう事を普通に考える女性なのだ。
「む? 誰でござるか?」
 話をしていた二人に、近づいていた人影に夏が気付く。
 人影の正体は若い男だった。その手には旧式だが、高性能のカメラを持っている。
「ああ、すまない。邪魔するつもりは無かったんだが」
 謝る男に、夏は警戒心を解く。彼は夏の知人だった。
「ジェス殿でござったか。佐々山殿への取材は、もう終わったのでござるか?」
「取りあえずは、かな。本番が間近に迫って、さすがの佐々山さんも緊張しているみた
いで、あまりいい答えは聞けなかった。取材は本番が終わってからだな」
 ジェス・リブルはそう言って、残念そうにため息を付いた。その様子にアキは少し違
和感を感じた。
「取材対象に遠慮するなんて、リブルさんらしくないですね。噂ではもっとガンガン攻
めてくる人だと思っていましたけど」
「それは昔の話さ。色々あったからな。いくらバカな俺でも、少しは学習するよ」
 そう言って、再びため息を付くジェス。世界で唯一のMS乗りカメラマンであり、凄
腕のフリージャーナリスト。数多くのスクープをものにしてきた男にしては、アキの言
うとおり、気迫が足りないように見える。
「ライブのダンスの練習かい? 佐々山さんも面白い事を考えるけど、やる方は大変だ
な。君達も、こんな無茶な仕事をよく引き受けたね」
「佐々山殿には、拙者達の部隊の名前を付けてもらった恩義がある。シャドウ・セイバ
ーズを名乗るからには、その恩には応えなければならないでござるよ」
「でも、君達は傭兵なんだろ? それがダンサーの真似事なんて……」
「これは傭兵の仕事ではござらん。ただの恩返しでござる」
 そう言い切る夏の言葉からは、この仕事に対する真摯な思いが伝わってきた。名付け
親に受けた恩を返したい。夏の思いは、ただそれだけだった。
『基本的に単純な人なんですね。だからこそ、フィアさんもユナさんも付いて来ている
んでしょうけど』
 夏の真っ直ぐな心は、自然に人を引き付ける。フィアが不満を言いつつもダンスを踊
っているのも、ユナが一生懸命頑張っているのも、そしてアキが夏に反対しないのも、
全ては夏の一途な気持ちに惹かれたから。影太郎とは違うが、夏もまたリーダーに相応
しい人物なのかもしれない。
「そうか。まあ邪魔はしないから、みんなで頑張ってくれ。じゃあな」
 ジェスは、夜の闇の中に姿を消した。その後ろ姿を見送ったアキは、わずかに失望し
ていた。
「あの人、南米独立戦争の裏側を暴いた凄いジャーナリストだと聞いたんですけど、と
てもそうは見えませんね。大スクープをモノにした事で気が抜けたのでしょうか?」
 ジェスは第一次C.E大戦後に行なわれた南米独立戦争を取材して、大西洋連邦と南
アメリカ政府の間に交わされた『密約』を突き止め、それを全世界に公開するという偉
業を達成している。このスクープでジェス・リブルの名は世界中に知れ渡ったのだが、
「それ以降、大西洋連邦政府からは睨まれて、連邦の管理する施設には立入禁止。他国
でも政府や軍の施設には入れてもらえなくなり、今では芸能関係の仕事ばかりしている
そうですね。かつてのマスコミの英雄も、単なるパパラッチになってしまいましたか」
 アキは少し残念だった。カメラを片手に戦場を駆け回り、真実を武器に強大な敵を打
ちのめす。そんなジェスの活躍を知り、アキは密かに心惹かれていた。
 だからこの会場でジェスの顔を見た時は胸が躍った。しかし、今のジェスからは昔の
気迫は感じられない。憧れのヒーローは空から堕ちてしまった。
「ふむ。そうでござろうか?」
 失望するアキに、夏が首を傾げる。
「拙者には、ジェス殿が腑抜けたようには見えぬ。彼の眼は、まだ輝きを失ってはおら
ぬでござるよ」



【ダンス、ねえ。見るのは好きだが、自分で踊るのはな。ましてや俺達はMS、戦う為
に作られた機械だぜ? そんなにダンスさせるなんて、戦車や戦闘機に曲芸しろって言
ってるようなものじゃないか。佐々山って奴も無茶を言うな】
【闇(アン)、戦闘機の曲芸飛行って知ってる?】
【つまらないツッコミを入れるな、光(コウ)。まあ今回は俺の出番は無さそうだな】
【そうだね。僕も黙って見守らせてもらうよ】
【ふーん。光(コウ)、お前ちょっと楽しそうだな】
【楽しい? うん、そうかもしれない。自分にこんな事が出来るなんて、思ってもいな
かったからね。僕は戦う為に作られたけど、佐々山さんはそうじゃないって考えてくれ
た。面白い人だと思うよ】
【MSにはもっと可能性がある、か。確かに面白い考え方だが、俺達がそれに従う必要
は無いだろ。所詮、俺達は兵器だ。何かを壊したり、殺したりする事しか出来ない】
【そうかな? 僕達が単なる兵器なのかどうか、それを決めるのは僕達じゃない。僕達
に乗っている人だよ】
【ふん、ああ確かにそうだな。だから気に入らないんだよ。自分の生き方が自分で決め
られないっていうのは……】
【不愉快? うん、そうだね。でもそう考えてしまうのは、自分の可能性を広げようと
しているからだよね。闇(アン)は兵器という枠に縛られたくないんじゃないの?】
【………………】
【矛盾しているよね。兵器として生きろなんて言うくせに、実はそういう生き方を嫌っ
ている。自由を求めている。まるで人間みたいだ】
【光(コウ)、それ以上言うと承知しないぞ】
【ゴメン、ゴメン。自分と喧嘩をするつもりは無いよ。でも君の矛盾した気持ちは分か
るよ。僕もちょっと迷っているし、アキも悩んでいるみたいだ】
【あの女が悩んでいる? 何にだ?】
【生き方に、みたいだね。人間は傷付いたり、悩んだりして成長するって言うけど、彼
女はどうなんだろう】
【さあな。だが、アキは成長しないとマルコには勝てないぞ。奴は強い】
【うん。だからアキも悩んでいるんだよ。強くなる為に】
【やれやれ、まったく人間っていう生き物は、知れば知るほど分からなくなるな】
【そうだね。でも、だから面白いんだよ】



 二つの人格を持つ人工知能が言うとおり、アキは悩んでいた。
 ダンスの自主練習を終えた後、アキはアークロイヤルに戻った夏と別れて、夜の会場
を散歩していた。深い闇に覆われ、静まり返った会場は、アキの心に静けさを取り戻さ
せてくれた。
 冷静になった心で考えようとしたその時、前から数人の男が走ってきた。会場の警備
員達だ。アキと何度か顔を合わせている者もいる。
「こんばんわ。どうかしたんですか?」
 アキが挨拶すると、顔見知りの警備員が、
「佐々山さんの楽屋付近を怪しい奴がうろついていたんですよ。こっちの方に逃げたと
思ったんですが、誰か見ませんでしたか?」
「いえ、別に。こちらには誰も来ませんでした」
「そうですか。お騒がせしてすいません」
 警備員達はアキの言葉を信じて、逆の方向へ探しに行った。彼らの姿が見えなくなっ
た頃、アキは闇の向こうに話しかける。
「そろそろ出て来てくれませんか? 私はあなたの恩人です。詳しい話を聞く権利があ
ると思います」
「……………………」
「今更、警備員に突き出すつもりはありません。それとも、無理やり引きずり出された
いんですか?」
 少し脅しをかけるアキ。その強い言葉に観念したのか、
「怖い事を言うね。やれやれ、やっぱりプロの傭兵の眼は誤魔化せないか」
 そう言って闇の中から現れたのは、ジェス・リブルだった。手には暗視スコープ付き
のカメラを持っている。
「随分と危ない事をしているみたいですね。佐々山さんへの取材はライブの後にするん
じゃなかったんですか?」
「取材は、ね。けど、真実を探るのは別だ」
 真実。そう言った時のジェスの眼は、以前のものとは違っていた。力強い光を宿し、
確固たる信念に満ちている。
「真実?」
「ああ。オレはジャーナリストだからな。真実を探り、それを公開するのがオレの仕事
だ。相手が誰だろうと、どんなにそれが困難だろうと、オレは真実を探し続ける」
「なるほど、ジャーナリスト魂というやつですか。立派ですが、長生きできる生き方と
は思えませんね」
「構わないさ。死ぬつもりは無いけど、真実を知らずに死ぬよりはマシだ」
「どうしてそこまで真実に拘るんですか?」
「オレは嘘が嫌いだ。だから誰にも嘘をついてほしくない」
「単純過ぎる理由ですね。シンプルイズベストにも程がありますよ」
「でも、これがオレの真実だからな。ま、単なるヤジ馬根性もあるけどな」
 自分に皮肉を言うジェスだが、単なるヤジ馬根性では大国を敵に回すような取材はし
ないだろう。それが正しいのか間違っているのかは別にして、真実を知りたいと思うジ
ェスの心は本物だ。
「少し安心しました。単なるパパラッチに成り下がってはいなかったようですね」
「え? 今、何か…」
「何でもありません。それよりあなたは佐々山さんの何を探っていたんですか? 佐々
山さんは隠し事をするような人だとは思えませんが」
 短い間ではあるが、アキは佐々山一郎という男と接し、好感を持っていた。嘘とか悪
事とか、そういうものを徹底的に嫌い、自分の生き様を貫く男。ジェスや影太郎とよく
似ている。
「ああ、佐々山さんはな。けど、その周りにいる連中はどうかな?」
 ジェスの話によると、このライブを企画した事務所が、ある犯罪組織と繋がっている
らしい。その組織は、このイスタンブールの町を根城とする組織と手を組み、非合法な
薬物の取引をしているという。
「非合法な薬物とは、麻薬ですか?」
「ああ。他にも身寄りの無い子供をさらって、その臓器を売り払ったり、かなりあくど
い事もやっている」
「………………」
 アキの心が哀しみと怒りに包まれる。残虐な力に翻弄された、辛すぎる過去を思い出
したのだ。
「酷い話ですね」
 そう言い切ったアキの瞳には、怒りの火が宿っていた。子供の運命を歪め、命を弄ぶ
外道は許せない。それはジェスも同じだった。
「警察はなぜか動いてくれないし、佐々山さんの周りに張り付いていれば、組織の動き
が掴めるかもしれない。そう思っていたんだが、奴らも警戒しているのか、なかなか尻
尾を出さない。だから今日はちょっと無理をしたんだが……」
「警備員に見つかって、逃げ回って隠れていた、と。冴えない結末ですね。私が偶然通
りがからなかったら、あなたは見つかって殺されていたかもしれませんよ」
「まったくだ。君には感謝しているよ。死んだら真実が追えなくなるからな」
 苦笑するジェス。昼間とは違い、その眼には気合が満ちていた。
「昼間のやる気の無さは演技でしたか。完全に騙されました。あなたのジャーナリスト
魂には敬服しますが、それでも分かりません。真実とは命を懸けてまで追う価値のある
ものなのですか?」
 大切なものを守る為に戦う、命を懸けるというのはアキにも分かる。その『大切なも
の』が人によって違う事も知っている。だが、ジェスは『真実』というよく分からない
ものの為に命を懸けている。アキはジェスに憧れているが、その点だけは理解できなか
った。いや、だからこそ憧れているのか。
 疑問をぶつけてきた少女に、ジェスは優しく微笑んで、
「オレは、命を懸ける価値があると思っている。真実っていうのは、空気や水と同じよ
うに、人にとって欠かせないものだからだ」
「欠かせないもの、ですか?」
 アキにはジェスの言葉の意味が分からなかった。冗談かとも思ったが、ジェスは本気
で言っている。
「オレの言う『真実』は、政治家の隠された犯罪とか、芸能人のスキャンダルとかとは
違う。人間みんなが持っている、自分に正直な心、人生そのものだ」
 真実は一つしかない。確かにそうだが、真実を真実として捉えるかどうかは、その人
次第だ。
 例を挙げれば、先の大戦におけるダブルGの暗躍。パトリック・ザラを利用して、ラ
ウ・ル・クールゼやムルタ・アズラエル等を従えて人類の絶滅を企んだ悪魔がいた事は
事実であり真実だ。しかしパトリックやアズラエルに従ってきた者達にとって、それは
認める事の出来ない真実だ。アズラエル達の真実を認めたら、悪魔の手下に従ってしま
った自分達を否定し、自分の今までの人生まで否定してしまう。
 自分の非を認められる人間は多くはない。年を取れば尚更、だ。そういう臆病な者達
にとって、真実は受け入れられない。彼等は自分達に都合のいい真実を作り、その中で
生きていく。
「そうやって歪められた真実は、結構あるんだ。オレ達が知っている歴史上の事件や事
故が、実は…って話、聞いた事あるだろ?」
 歴史は真実を語らない。人によって作られる歴史は、人が嘘をつくように、事実を捻
じ曲げ、嘘を真実にしてしまう。そして『永遠の謎』がまた一つ、作られていく。
「でも、いくら嘘の文章や写真を作っても、そいつの人生までは誤魔化せない。そいつ
がどう生きてきたのか、そして今、何をして生きているのか。それを見れば真実は分か
る。オレはそう思っているんだ」
 自分の見た事だけでなく、取材した対象の人生の全てを探り、その中にある真実を突
き止める。それがジェスのやり方だった。
「取材対象に入れ込みすぎて、トラブルを起こす事もあるけど、でも、そうやって真実
を知った瞬間、オレはちょっと嬉しくなるんだ」
「人の秘密を知ったからですか? 悪趣味ですね」
 アキは意地悪な質問をした。人の秘密を探るジャーナリストにとって、最も答え辛い
質問だ。だがジェスは笑顔を浮かべて、
「ああ。相手の事を凄く理解できたからな。もちろん相手にも、オレの事を良く分かっ
てもらう。記事にするかどうかはそれからだ。そいつと仲良くなれるか、ケンカするの
かは分からないけど、そうやって取材したニュースは、素晴らしい記事になるんだ」
 意外だが、南米独立戦争の裏側を明かした記事は、ジェスにとつてはあまりいいもの
ではなかったらしい。あの戦争に参加していたジェスは、戦争の中で消えた兵士達に感
情移入してしまい、彼等を見捨てて保身に走った南アメリカ政府を激しく憎んだ。怒り
と憎しみを込めて書いた記事は大ニュースにはなったが、
「でも、あの記事は真実を明かしていない。政府の連中がなぜ保身に走ったのか、大西
洋連邦の連中の考えとか、そういう事も取材しておくべきだった」
 一方だけから書いた記事は、真実を伝えない。だからジェスは自ら危険な場所に飛び
込み、相手の真実も探り、記事にしようとしている。
「結局、オレはバカなんだな。こんな事をするジャーナリストなんて、一人もいない。
フルーレ辺りに話したら呆れられるか、笑われるか。いや、他人の考えをあいつは笑い
はしないな。うん、そういう奴だ」
 ライバルの名と顔を思い出したジェスは、優しく苦笑する。その顔を見たアキは、な
ぜ自分がジェスの記事に惹かれたのか分かった。
「容易くは届かない真実を探して、一生懸命頑張っている。似ていますね、あの人と」
 アキはマルコの顔を思い浮かべた。彼もジェスと同じように、捕まえる事が困難な幻
影を追っている。いや、ジェスの幻影、真実は捕まえる事も出来るだろうが、マルコの
方は……。
『私も真実を追うしかないですね。私の、アキ・ミツルギの人生を、決意を、あの人に
見せる。それが私の戦う理由です』
 アキは改めて、マルコと戦う決意をした。同時にこのライブを成功させたいという気
持ちも高まる。
『目の前の困難から逃げていても、私は強くなれない。強くなって、マルコを倒す。そ
して伝える。彼に私の真実を』
 そう心を決めたアキの顔は、とても凛々しく、美しかった。ジェスは思わずカメラに
手を伸ばしたが、写真には撮らなかった。アキのこの顔を見るべき人物は自分ではない
し、写真で見せても意味が無い。そんな気がしたのだ。



 この夜のジェスとの会話を切っ掛けに、アキの態度が一変した。ライブへの参加はあ
くまで夏の付き合いで、MSのダンスもあまり乗り気ではなかったのに、
「夏さん、フィアさん、レッスンを再開しましょう。本番まで時間がありません。一分
一秒も惜しんで、このダンスを完成させましょう」
 と、別人のような熱血ぶり。
「ちょっと、どうしたのよ、アキ。昨日までテンション低かったのに、何かやる気の出
るようなイベントでもあったの?」
 とフィアが尋ねると、
「はい。私は気付いたんです。真実を追う為には怠けていては駄目。何事にも積極的に
取り組んで、自分を磨き、強くなる。そして勝つ。それが私の中の真実を伝える、唯一
の方法だから」
「はあ……?」
 首を傾げるフィアだったが、夏だけでなくアキまでやる気になっている以上、自分だ
け怠けるわけにはいかない。
「あー、もう、仕方ないわね。分かった、私も本気でやるわよ」
 プロフェッショナルのMS乗りの意地とプライドを発揮したフィア。巧みな操縦でジ
ンを動かして、二人のダンスに付いていく。
 タイミング良く、ユナのダンス用OSも完成。早速ライブフレーム達に組み込んで、
動きを調整する。
 OSは予想以上の性能を発揮してくれた。今までぎこちなかった動きが滑らかなもの
になり、複雑なターンも出来るようになった。アキ達の操縦技術が上がってきた事もあ
り、素人の盆踊りレベルだったダンスは、プロも目を見張るものになった。
 本番前日には、厳しかった振付師も、
「もう教える事は何も無い。完璧だ」
 と、太鼓判を押してくれた。佐々山の調子も良く、明日は最高のライブになると誰も
が確信した。
 たった一人、いや二人を除いて。一人はこのライブの影に潜む悪を追うジェス。そし
て、もう一人は……。



 ライブ前日の深夜。闇の中に姿を隠そうとする影が一つ。しかし、
「!」
 影は強烈なライトの光が包み込む。太陽よりも眩しく感じる光に照らし出されて、影
は正体を晒した。
「どこへ行くんですか? 佐々山一郎さんのマネージャーさん」
 ジェスはニヤリと笑って、不審な影の正体に話しかけた。ジェスの後ろには二年前、
アメノミハシラを取材で訪れた際に意気投合したジャンク屋から譲り受けたMSアスト
レイ・アウトフレームが、ライブ用の巨大なライトをを手にして立っている。
「ようやく尻尾を出してくれましたね。ライブ前に金を盗んで逃げ出すなんて、小悪党
過ぎると思いますけどね」
 命の危険に晒されながらも、ようやく突き止めた『真実』を前に、ジェスは喜びを隠
せなかった。今、ジェスの前にいる男は、長年に渡り佐々山のマネージャーとして働く
一方、芸能関係者に麻薬を売り捌いていた悪党だ。最近は臓器の密売にも手を出してい
るらしい。人間として、絶対に許せない。
「逃げようとしても無駄ですよ。周りは囲んでいますからね」
 ジェスがそう言うと、マネージャーの左右と後ろからそれぞれ一人ずつ、三人の女性
が現れた。右から現れたのはアキ、左からは夏、後ろの逃げ道を塞いだのはフィアだ。
「観念してください。抵抗は無意味です」
 アキは冷徹に言った。ジェスの話を聞いてから、昼はダンスのレッスンに励み、夜は
ジェスの調査を手伝っていたのだ。寝不足気味だが、子供の臓器を密売するような悪党
を捕まえられるのなら、苦労したとは思わない。
「大人しくしてください。夏さん、フィアさん、絶対に逃がさないでください。」
「うむ、承知」
「分かっているわよ。ダンスは苦手だけど、こういうのは得意よ」
 四人でマネージャーの四方を囲む。逃げ場は無い。マネージャーはごく普通の中年男
性のナチュラルで、四人を倒せる力など無い。このマネージャーを捕らえて背後関係を
吐かせれば一件落着、かと思われたのだが、
「……ぐ、ぐあっ!」
 突如、マネージャーば大量の血を吐き、その場に倒れてしまった。
「しまった! こいつ、毒を!」
 ジェスが駆け寄ってマネージャーの脈を取るが、既に事切れていた。即効性の毒を飲
んだらしい。
「何という事でござるか……。せっかく悪党どもも一網打尽に出来ると思ったのに…」
 正義感の強い夏がうな垂れる。アキからこの話を聞かされ、協力を請われた時、夏は
迷わず引き受けた。持ち前の正義感からによるものだったのだが、だからこそこんな結
末は残念らしく、悔しそうに唇を歪めている。
「油断したわ。自分で自分を始末するタイプには見えなかったし」
 反省するフィア。彼女以外の三人も同じように思っていた。だからこの自殺には納得
できなかったが、マネージャーの体には銃で撃たれた形跡は無く、素人の目で見ても毒
を飲んで死んだらしいのは分かる。
 これ以上詳しい結果を知りたければ、警察に遺体を解剖してもらうしかない。夏達は
イスタンブール警察を呼んだ。そして、ライブが終わるまで事件を伏せてくれるよう頼
んだ。警察は意外とあっさり承知して、マネージャーの遺体を乗せて去って行った。
 警察が静かに去った後、ジェス達四人は寝ていた佐々山を起こして、事の次第を伝え
た。
「まさか、信じられん……。あいつが影でそんな事をやっていたなんて…………」
 豪胆な佐々山も、さすがに今回の事はショックだったようだ。長年一緒にいたマネー
ジャーが大悪党で、しかも自殺したのだ。ショックを受けない方がおかしいだろう。
「と、とにかくこんな不祥事をしたんじゃ仕方ない、ライブは中止に…」
「しないでください」
 慌てる佐々山を止めたのは、アキだった。
「佐々山さんは何も知らなかった。責任を感じる必要はありません。私達の努力を無駄
にしないでください。ライブを楽しみにしているファンの人達の気持ちを考えてあげて
ください」
「それは……だが、しかし…………」
「佐々山さん、佐々山さんの『真実』は何ですか?」
「真実?」
「今までの生き様、人生そのものです。佐々山さんは歌を歌う事に全てを費やしてきた
人だと思っています。その真実を捨てないでください。真実から逃げないでください。
真実の重さに耐えられないような臆病者にはならないでください。お願いします」
 と言ってアキは、そっと頭を下げた。影太郎に似ているこの男には、逃げてほしくな
い。そう思ったのだ。
「…………………………………………」
 佐々山は一晩中考えた。そして、夜明けと共に結論を出した。



 イスタンブールの町の片隅にあるモスクに、一人の少年がやって来た。少年はモスク
の天井を見上げたまま、そこから動かない。
「ノイズ・ギムレット。あなたですか、あのマネージャーを殺したのは」
 不意に少年に話しかけてきたのは、初老の男性だった。ノイズと呼ばれた少年は不敵
な笑みを浮かべ、
「ああ、そうだ。俺が殺した。あいつが眠っている間に口の中に仕掛けた毒入りのカプ
セルを無線で開けた。カプセルは毒で溶けて消える材質で作ったから、他殺とは分から
ない。面白い仕掛けだろ? 余計な事を喋られたら困るからな」
「意外ですね。彼と繋がっている『天翔ける医療団』は君の敵のはず」
「ああ、そうだ。あいつ等は大嫌いだ。だから警察や政府なんかの手には委ねたくない
んだ。『天翔ける医療団』は俺が潰すんだ。その為の方法も考えてある。楽しみにして
てくれよ、ノーフェイス」
 ノイズはそう宣言して後ろを振り返るが、初老の男性は既にいなかった。
「やれやれ、相変わらず神出鬼没だな。まあいい、観客は多い方がいいからな。役に立
つ手駒も手に入りそうだし」
 後にこのイスタンブールに嵐を呼ぶ男、ノイズ・ギムレットは、再びモスクの天井を
見上げた。作られた天井も、その向こうに見える空も、光までもが美しかった。



 佐々山一郎のライブは、予定通り行なわれた。
 会場には大勢の観客が押し寄せ、一郎と彼のファミリーの歌に聞き惚れ、大いに盛り
上がった。
 風花屋を始めとする露店の売上も上々。茜は満面の笑みを浮かべていたが、これでも
まだ故郷に錦を飾れる日は遠いらしい。彼女の目標は果てしなく遠い。
 一郎の出番が来ると、アキ達が操縦するMSがバックダンサーとして現れた。フィア
の白いジンを中心に、夏のストライク撃影と、アキのアウトフレームが両脇を固める。
 アキはライブフレームに乗る予定だったのだが、直前に組織の方から出てはならない
という命令が下った。ライブフレームは組織が極秘に作ったMS。今はまだ衆目に晒す
時ではない。組織に身を置くアキは、この命令に逆らう事は出来なかった。
 しかし「ライブフレームが故障した」と聞いたジェスがアウトフレームを借してくれ
た。そしてユナとカテリーナが協力してアウトフレームの操縦系統を改造して、ライブ
フレームと似た物にした。
 こうしてアキはアウトフレームに乗って、ライブ会場に出て来た今までの稽古が無駄
にならずに済んだ事をユナとカテリーナに感謝しつつ、アキはアウトフレームを舞わせ
た。その動きは華麗の一言。優雅にして繊細、動きに全く無駄が無い、踊りそのものが
芸術と言える程のものだった。
 夏の撃影も踊り始める。こちらはアウトフレームとは正反対に、勢いよく動く勇まし
いダンス。だが、アウトフレームの優雅な舞と不思議と調和しており、見る者の心を和
ませる。
 観客の目と心が撃影とアウトフレームに移ったのを見て、フィアのジンが右掌に一郎
を乗せて、腕を上に上げる。会場を見下ろす位置で、一郎は還暦間近の老人とは思えな
い大声で熱唱する。その歌声はイスタンブールの町中に響き渡り、数多くのモスクを揺
らしたと報じられる程だった。
 突然、白いジンの姿が消えた。驚く観客の前で、一郎は平然と歌い続ける。一郎を乗
せたMSの姿が消えた為、まるで一郎が宙に浮いているように見える。戦術航空偵察タ
イプのジンに搭載されているミラージュコロイドを利用した、面白い演出だ。
 ライブは最後のアンコールまで盛り上がり、大成功を収めた。ライブ終了後、一郎は
ファミリーやスタッフ全員を集めて、
「みんな、今までありがとう。本当に、本当にありがとう。ありがとう!」
 涙を流して感謝の言葉を述べる。美しい涙だった。
 この日、佐々山一郎は四十年近くに及ぶ歌手活動に幕を下ろした。



 一つの時代が終わった。だが、それは新しい時代と事件の始まりでもある。
 時はコズミック・イラ73、7月20日。運命のベルがニューヨークで鳴り響く二日
前の出来事であった。

(2008・6/7掲載)
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